サブスクD2CのPMFことはじめ(途中)
目次
これは何
- Repro Inc. / ㈱銭湯ぐらしの伊藤(@n_11o)が自社でリピート通販事業(今風にいうとサブスク型D2C)を始めて1年ほど経ったので、立ち上げ~運営についての学びや失敗を備忘録的に残したドキュメントです
- 2ヶ月ほど前に何気なく投稿したTweetが思いのほかバズってしまったので、こちらの箇条書きメモを補完するような内容にできれば幸いです
お風呂のD2Cを始めて1年ちょい経ったので、最初から知っておけばor意識すればよかったことを雑に供養します
— n_11o (@n_11o) May 21, 2021
「SaaSの考え方がそのまま活かせると、もっと早く気付くべきだった」ということに尽きる pic.twitter.com/spir56SJsL
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お前だれよ
- Repro Inc. / ㈱銭湯ぐらしに所属している伊藤と申します
- ざっくりのキャリアとしては、新卒で朝日新聞入社 → 5年ほど前にReproというMartech領域のSaaSスタートアップに入社 → 並行して友人らと㈱銭湯ぐらしという「銭湯の持つ価値をもっと世の中に伝えていこうぜ!」な会社の経営、という感じです。あまり意識してませんでしたが新卒から現在までずっとサブスク畑です
- 銭湯ぐらしは「銭湯付きセカンドハウス」の運営と「お風呂のもとのリピート通販」の2つを主な事業の柱としており、自分は後者の責任者をやっているので本稿はその話です
どんなことが書いてあるか
- D2Cで、特にリピート型の商材を0→1で立ち上げる際や運営していくうえで大事だと思うことをSaaS業界5年+D2C事業オーナー1年ほどの自身の経験を元に書いています
- 「うちのお店でも単品リピート通販これから始めたいんですが…😶」という個店の方や「お客さんがリピートしてくれなくて困ってます😢」という人は参考になるかもなのでぜひ読んでみてください
- 結構長いので、お忙しい方は目次から自分の読みたいところに飛んでそこだけ読むのがお勧めです
前提(Disclaimer)
- 僕らは**「銭湯の持つ価値や豊かさを(銭湯経営ではない形で)世の中に届ける」**ということを掲げており、D2C事業を始めるにあたってもバスタイム領域で戦っていくことは半ば自明の理でした
- なので市場規模や収益性からの逆算で商材選定をしたわけではなく、そこは本稿のスコープ外となっております (ここが一番大事なのは承知しているのですが、そういうプロダクトの作り方をしておらず。ただ「LTV > CACのユニットエコノミクスは成立する」という試算は勿論立てたうえでD2Cサブスクを始めています)
- **「日用品や健康食品、化粧品など単価感が数千円ほどで、ユーザーがリピートしやすい商材でSKUを絞ってD2Cをやられている、もしくはこれからやろうとされている方」**をメイン読者に想定しており、同じD2Cでもマットレスやスーツケースなど単価の高い商材やアパレルなどSKUの多い商材ではアプローチが全く異なると思いますので、あまり参考にならないかと思います
- また、事業規模としても売上ゼロから月商数十万~数百万程度、月間受注数が500件以下の方を想定しており、それより先のフェーズにいる企業様/ご担当者様にとってもあまり参考にならないかと思います
- 社内ドキュメントを加工・流用しているので、“ですます調”と”である調”が混じっていたりするのはご容赦ください
- 事業には人が不可欠ですが、立ち上げにおける組織作りなどについては本稿のスコープ外としております
本稿におけるPMFの定義
- 分かりやすさ&キャッチーさがあるので敢えて使っていますが、「PMF」は人によってかなり解釈が異なる用語だと考えているため、本稿では以下のように定義しております
PMFの定義
NOTE
■ **定量面 ・認知~購入までのファネルのCVRが自社の想定を上回っている **・自社で想定したジョブを持つ顧客の3ヶ月目/6ヶ月目/12ヶ月目の継続率が自社の想定を上回っている ** ■ 定性面 ・インタビューを通じて、自社で想定したジョブを持つ顧客の10人以上から”熱狂的な”感想をもらうことができている ・顧客自身がプロダクトのコアバリューやユースケースを言語化してくれている ・自社で想定したジョブを持つ顧客の解約理由がコアバリューを根本的に変更しなければ解消できないものではなく、商材やコミュニケーションの改善によって(0にはできなくとも)解消可能なものである **
検証できている不確実性
NOTE
**・市場の不確実性… **入浴剤やバスグッズの市場は昔から存在し、僕らの商材は市場をゼロから作るものではなく市場をペネトレイトするタイプの商材であるため、ここの検証はほぼ行っていない ・ニーズの不確実性… 上記の定量面/定性面の結果を基に自社プロダクトが”顧客がお金を払って選んでくれる理由” **“使い続けてもらえる理由”**を検証でき、数値面でもプロダクトのユニットエコノミクスが成立することが証明されている
検証できていない不確実性
NOTE
**・供給の不確実性… **現在よりも注文数が10倍、100倍になったときに同じコアバリューを保ちながら製品を供給できるかはロジの面でも組織の面でもまだ見えていないので、早期に潰す必要がある **・スケールの不確実性… **現状ほとんどペイドの施策を行っていないので、ペイドを強化してスケールしていく際にCACが想定よりずっと高くなってしまうリスクはある。いわゆる”Go to Market”は未検証
要するに、ごくごく初期の段階の話です。
「この程度でPMF突破したつもりになっているんじゃない😠」というご指摘はごもっともだと思いますので、“最初の一歩目”の方に向けたドキュメントということでご容赦くださいませ。
…と本題に入る前から予防線張りまくりですが、つらつらと書いていきます。
大前提: ECではなく”B2C SaaS”だと思って運営する
Takram佐々木さんやFABRIC TOKYO森さんをはじめ、D2Cを**「メーカーの皮を被ったテック企業」**と表現されている方は多いかと思います。
僕が考えるDirect to Consumerの特徴やアプローチについてお話しします。まずビジネスモデルは…(中略)…このように、データビジネスという側面があるので、僕は最近「D2Cスタートアップ = 物売りの皮を被ったテックカンパニー」であるという風に表現しています。 【イベントレポート】D2C inside #01「海外スタートアップに学ぶD2Cの成功術 & NYC現地視察報告会」
これらの主張には全くもって同意であるものの、ことサブスクのD2Cにおいては、そこから更に一歩踏み込んで
NOTE
「サブスクD2C = メーカーの皮を被ったB2C SaaS企業である」
という認識のもと、プロダクトや組織を磨いていくべきだと考えています。
これが本稿および自分が公開しているD2C関連の全ドキュメントに通底する主張であり、もっとも重要な点です。
逆に言うと、単品通販型のD2CはSKUの多いアパレルや(Allbirdsとか) 高単価でけっこうなCPOをかけてもペイする商材(Casper、Awayなど)よりも、SaaSの通説やSaaS企業の事例などをインプットしたほうが学びが多いのではということです。
- 購買はゴールではなくスタート
- カスタマーサクセスファースト
- オンボーディング命
- 継続率(裏返すとチャーン)が何よりも大事
- 今月より来月、来月より来年…と年々サービスが良くなる
- CRMしやすいように顧客DBを整える
- クロスセル、アップセルを取り入れる
などなどです。
書いてみると「なんだそんなことか」という感じなのですが、なんだかD2Cの事業運営の話になるとどうしても
- ブランディング
- 商品開発
- 新規ユーザ獲得(特にSNSマーケ、アフィ、LPOなど)
あたりの話が多い気がしており、それらも勿論重要なのですが、そこじゃない部分についても書きたかったので筆を執った次第です。
NOTE
**<注意> **・D2Cは物売りである以上「在庫」や「仕入れ」という概念があるので、コスト側やキャッシュフローの観点ではぶっちゃけ全然違います。SaaSの考え方を適用しやすいのはトップライン側だけかなと思います
ここからは、自分が箇条書きで共有したtweetの各項目に関して補足する形でつらつらと書いていきます。
ファネル(購入CVR)よりもコホート(グループ別RR)
kpi管理ことはじめのところでも書いてた
-
あまりにもCVRが低くてCVが生まれないとかだと
-
CVR1%切っているようだと厳しい気がするので訴求軸見直すなりLPのデザイン変えるなり値段見直すなりした方がいいかと思います
-
また、拙稿「サブスクD2CのKPI管理ことはじめ」でも書いたが、
NOTE
・初月分の売上だけでリクープできる ・ビジネスモデル上はサブスクだが実質買い切りモデル(3回購入したら終わり、とか継続回数が決まっている)
みたいなケースでも戦略上CSを重要視しないというのはぜんぜんアリだと思う。まあ会社として何を目指すかですね😐
-
キャリアのなかでCSの経験があるわけではないのでめっちゃ手探りですが、現在サービスリリースから13ヶ月目(2020.7月リリース)で12か月後のリテンションレートは51.4%なので、C向けのサービスとしては悪くない数字かなと思います
Dollar Shave Clubは低単価のカミソリだけを提供しているわけではない。サブスクリプション型にすることで、時間・お金・体力の削減を提供し、C向けプロダクトの市場でもトップと言われるリテンション率を保つことができた。 (中略) Dollar Shave Clubの4年間のリテンション数字は一般のC向け定期購入プロダクトをはるかに超えている。Dollar Shave Clubに登録してから12ヶ月後では約50%のユーザーが課金し続けている。48ヶ月では25%の登録者が課金しているのだ。
比較すると、2017年6月にアメリカで上場した食品通販のBlueApronの12ヶ月後のリテンション率は22%、2017年11月に同じくアメリカで上場したHelloFreshでは12ヶ月後のリテンション率はたったの12%であった。 (「【完全版】D2Cビジネス 成功へ導く5つの秘訣と事例集 Part2」より抜粋)

かりそめのPMFに注意する
米ぬかすげぇ🤭ってなった入浴剤紹介していいですか?会社の後輩に使ってみてください!とおすそ分けしてもらったものなんだけど、湯船からあがったら、あれ?もうボディケアしたっけ?くらい、つるつるすべすべになったの〜。いつもボディローション塗りたくってるくらい乾燥肌なので、これはうれしい pic.twitter.com/nUyCv1D5Y4
— SHOKO (@shokommr) May 16, 2020
バズり狂い、EC開始2日目にして半端ない数売れました。
うおお、ここか!このニーズか!
美容
しかしながら
B2Cだと
オンボーディング is 大事 of 大事
- オンボーディングがこの世のすべて。これはB2B SaaSもアプリマーケもD2Cも変わらない真理
- どこまでをオンボーディングと定義するかは商材や事業フェーズにもよるが、サブスク型のD2Cであればどんな顧客でも必ず通る**「初月の商品到着⇒開封⇒商品の初回利用」**が最も優先的に知恵を絞るべきピークポイントであり、そこの体験を作りきってから商品到着前後のコミュニケーション(メール、LineなどのCRM)や2ヶ月目、3か月目の体験改善に広げて行った方がよいと考えます。
- ECでは昔から「F2転換率」が大事と言われてますね。本質的にはその話と変わらないです
- オンボーディングの重要性に関しては、ECやリピート通販界隈の記事よりもアプリやB2BSaaSの記事をいくつか読んだほうが参考になります
- B2B SaaSの例
- toCサービス(主にアプリ)の例。グロースハック教本のARRRAモデルなどはアプリマーケ業界だともはや常識。
- ECに限っていないですが、西井さんの『サブスクリプションで売上の壁を超える方法』もおすすめです
0ヶ月目~4ヶ月目くらいまでの継続率が安定するまでは、新規の拡大よりも既存の維持や解約防止、その初手としてのオンボーディング注力が良いかなと思っております。
ちなみにオンボーディングはSuperhumanの事例などを参考にしています。toCでヒューマンタッチなオンボーディングをやり切る気概すごい。
補足: Superhumanに学ぶオンボーディング
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toCサービスのオンボーディング事例として参考にしているものの一つにSuper Human(“The Ferrari of Email Services” と呼ばれるメールサービス)がある
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Superhumanは登録したすべてのユーザーに対してヒューマンタッチのオンボーディングを行っている
B2B SaaSのサービスならまだしも、B2C SaaSのサービスで、Subscribeした全てのユーザーに対してオンボーディング担当者が30分もの時間をかけて(僕の場合は質問を結構したので45分位だった)対応しているサービスを僕は見たことがありません (「Superhumanを使ってみて感じたThe Modelの新しい形」より抜粋)
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自社でもSuperhumanを見習い、定期便の新規契約が発生したらアンケートの回答とキックオフmtgを全顧客に対してご案内するオンボーディングプロセスに変更しました
-
この記事本当にすごいです

顧客はペルソナではなくジョブで理解する
具体的に僕らの場合で言うと、コアターゲットを「毎日湯船に浸かっていて、入浴剤もほぼ毎日使っている人」に絞りました。
本稿を読んでいただいているような日々忙しく働く皆さんには想像がつかないかもしれませんが、そういった層が一定層います
”耳の痛いこと”を言ってくれるお客さんと最低5人以上つながっておく
- ユーザーインタビューことはじめでも書いたのですが、
補足: 耳の痛いことを言ってくれる顧客を身の回りから見つける
- 対面やオンラインで会話を引き出せるとはいえネガティブな意見に関しては顧客から引き出すのは難しい(インタビューを受けていただいている時点でサービスに好意的なユーザーという選択バイアスが発生する)
- なので、気軽にこちらから聞けて、尚且つ忖度の無いフィードバックをもらえる知人友人を身の回りで見つけるのはとても重要
- 知り合いの中からターゲットを見つけるのが難しい商材もあるが、5人くらいはそういった協力者がいてくれると、ユーザーインタビューをした方々からは出てこないぶっちゃけた不満やサービスの課題が見つかる
- 例えば自分の場合だと、家族や友人に買ってもらってより率直な感想や意見をもらっている
- ただ、自社で想定しているジョブを抱えていない知り合いからの意見は逆にノイズになり得るので、どんな方からのご意見も有難くいただきつつ、取捨選択の軸は自社で持つべき

- ちなみに率直な意見をくれるユーザーを身の回りから見つけることの重要性については、一世を風靡した女性メディアアプリ「C CHANNEL」の立ち上げメンバーである齊藤さんに伺いました
- それ以外にも**「PMFの突破方法」**をテーマに齊藤さんとお話したPodcastがあるので是非そちらも聴いてみてください
NOTE
not パーソナライズ、but キュレーションが期待値越えの肝
CRMはlineやメルマガだけにあらず
むしろ梱包や同封物のほうが効く
商品開発ではなくモーメント開発 and ポジショニング開発
取得すべきはデモグラではなくゼロパーティデータ
- デモグラ
- また、アプリやSaaSの世界では
プライシングを競合調査と準粗利だけで決めない
-
個人的にはプライシングがいっっちばん難しいと思いました。何というか、サイエンスしきれない。事業者側の意思入れが必要な領域だなと
-
そういう点で、ここもSaaSらしく「改訂を前提で」最初はエイヤで決めてしまうのが
-
なので、個人的には「自社が想定しているポジショニングエイヤーで出す → ユーザーヒアリングする →
-
競合調査や目標利益、PSM分析などが必要ないと言っているわけではないです。
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当初から25%価格を上げています。
値決めは経営
テックタッチとヒューマンタッチを使い分ける
RDB設計が肝
と死ぬのでさっさとやるのが吉(ちなみにBASEやshopifyだけではそこは賄えないよ)
決済 is 難しい
まわりがガチ負債になるのでそこだけよーく検討しろ / 逆にそれ以外はスイッチングコスト低いのでガンガン新しいツール試してよし
ECカート側からしたらそこを握りにくるのは当たり前なんですが、
お恥ずかしながら、最初にBASEを
フロントはnotion(super)、バックはAirtable、決済はStripeが固定費+トランザクションフィー最安のサブスクEC構築
— n_11o (@n_11o) June 30, 2021
おわりに
自分は
参考リンク
- 記事を書くにあたって参考にさせていただいた記事リンクもまとめて貼っておきます